東洋医学の基礎と経絡治療


東洋医学でいう健康体とは、生命エネルギーである「気」と各組織に栄養を運ぶ「血」が、からだ中をスムーズに循環しており、それらを統括する五臓六腑(六臓六腑)がバランスよく働いている状態であると考えられています。

※六臓六腑・・・肝、心、心包、脾、肺、腎と胆、小腸、三焦、胃、大腸、膀胱のこと

 

そして、何らかの原因で、そのバランスが崩れると「病気」という状態になり、「気と血」がスムーズに流れなくなり、からだに様々な症状が発生することになります。

 

東洋医学の治療とは、その原因をさぐり、その状態を表すパターンである「証」を見定め、それに従って漢方薬なり鍼治療なりを施したり、食事や生活指導をする事を言います。

 

東洋医学の治療法でも、漢方薬など薬草の性質を使って身体のバランスを整えたり、機能を高めたり、症状をコントロールする方法と鍼や灸、手技療法など施術家が直接患者の身体に施す技術を中心にしたものに分けられます。

 

当院で行う経絡治療スタイルの鍼治療で言うと、望(観る)・聞(聞く、嗅ぐ)・問(質問する)・切(脈診、腹診、経絡診)といわれる方法を使い、「証」(しょう)を見定め、その「証」にあわせた「ツボ」と鍼のテクニックを使って五臓のバランスを回復させて、その時のからだの持っている自然治癒力を最適化さていきます。

 

これを「本治法」(ほんちほう)と言って、治療のベースに置いています。

 

そして、痛みなどの症状に対する治療を「標治法」(ひょうちほう)と呼んでいます。

 

このように当院で行う「経絡治療」では、出ている症状にアプローチすると同時に、からだの生命エネルギー(自然治癒力、免疫力)を高める事が重要であると考えています。

 

〇東洋医学用語解説

 

陰陽(いんよう)

上の図は太極図と言われる陰陽を表すのマークです。

 

お互いに対立し依存し合いながら万物を形成する陰と陽の気を表しています。

 

中国古代思想の「陰陽学説」では、地上のあるすべてのものには、「」と「」で成り立っているというもので、人間のからだの状態や治療または養生にも利用されます。

 

例えば、五臓六腑の腑は陽の臓器、五臓は陰の臓器。熱は陽で冷えは陰、表は陽で裏は陰。男は陽で、女は陰など。陰と陽はお互いに相対するものですが、コインの表と裏の様に切り離すことができません。

 

よって、「陰」なければ「陽」は存在しないのです。

 

 

・五行

自然界の森羅万象を「木」「火」「土」「金」「水」の自然界の代表的な5つに分類した哲学で、「陰陽学説」とあわせて「陰陽五行説」とも言います。

 

東洋医学では、人間は自然界の一部だとして、この「五行」を人間のからだの働きに応用しました。

 

「木・火・土・金・水」はそれぞれ「肝・心・脾・肺・腎」の五臓と「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」の六腑となります。

 

五臓六腑とと聞くと、カラダの臓器を連想しがちですが、実はもっと広い範囲の意味をさします。

 

「肝」

・循環、代謝、発散、排泄、解毒などをコントロールする役割

・感情をコントロールする役割

・血液を貯蔵する役割

・肝臓や堪能だけでなく、爪や目、涙、筋腱なども分類

 

「心」

・血液循環と拍動をコントロールする役割

・脳(大脳皮質、高次中枢)や精神活動をコントロールする役割

・心臓や小腸だけでなく、顔面や舌、汗、脈なども分類

 

「脾」

・消化吸収をコントロールする役割

・血液が漏れ出ないように統率する役割

・脾臓や胃だけでなく、筋肉や四肢、口、唇、涎(よだれ)なども分類

 

「肺」

・呼吸をコントロールする役割

・水分循環をコントロールする役割

・防衛機能をコントロールする役割

・肺や大腸だけでなく、皮膚や体毛、鼻、のど、気管支、音声なども分類

 

「腎」

・生命力を貯蔵する役割

・生殖や成長発育、老化をコントロールする役割

・水分代謝を調整する役割

・腎臓や膀胱だけでなく、脳や骨、骨髄や耳、泌尿生殖器、肛門、毛髪、唾液なども分類

 

・「気」(き)、「血」(けつ)

 

東洋医学の基本となる概念の一つで、「気」と「血」が体を全身を巡り、バランスを取ることによって、生命活動が成り立っていると考えています。

 

「気」とは、生命の源であり、目に見えない生命エネルギーの事で、一方「血」とは、反対に目に見えるもので、血液の事をさします。

 

「気」と「血」は陰陽の関係にあり、それぞれ独立したものではなく、お互いに依存、協調しあいながらバランスを取り合いながら体を循環しています。

 

「気は血の師であり、血は気の母である」とも言われています。

 

当院が行う「経絡治療」では、主に鍼は「気」に働きかけ、灸は「血」に働きかけると考えています。

 

・経絡(けいらく)

 

東洋医学では、古来より「気」と呼ばれる生命エネルギーがからだ全身を巡っていることで人の健康が保たれていると考えられてきました。

 

その気の流れるルートが「経絡」といい、半身で12本と前後の真ん中にある2本の経絡があります。

 

それぞれ肺経(大腸経)・心経(小腸経)・心包経(三焦経)・脾臓(胃経)・肝経(胆経)・腎経(膀胱経)の12本と任脈・督脈の2本。

 

 その「経絡」上に「気」が出入りする「経穴(けいけつ)」いわゆるツボがあり、全部で365穴あると言われています。

 

・経絡治療(けいらくちりょう)

 

各経絡には、五臓に相当する性格があり、何らかの原因で経絡の気の流れに過不足が生じると、そのバランスは崩れ、体は不安定な状態となります。

 

経絡治療は、各経絡を流れる気の過不足を望聞問切四診法により見定め、鍼の「気」を動かす特徴を用いて、それぞれの経絡の気の流れを最適化する事で、健康に導く治療法です。

 

※経絡治療はいくつかのスタイルがあり、その手法は様々です。当院では最も高度な鍼のを用いる東洋はり医学会の経絡治療を行っています。

 

一般社団法人 東洋はり医学会 − 脉診流経絡治療の鍼灸学会 (toyohari.net)